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ATLLの病態と予後・診断

ATLLの病態と予後

ATLLの主な臨床症状と検査所見

ATLLでは、腫瘍細胞の増殖が原因となり、様々な症状をきたす。リンパ節腫脹、肝脾腫、皮膚病変などは高頻度に認められる。進行し多臓器に浸潤すると、下痢や便秘、頭痛、日和見感染症、高カルシウム血症による倦怠感や意識障害などがみられる1)2)。 検査所見としては、末梢血白血球数の増加、血清乳酸脱水素酵素(LDH)・カルシウム値・可溶性インターロイキン-2受容体(sIL-2R)の上昇などがみられる3)4)

ATLLの皮膚病変

皮膚病変はATLL患者の約半数に認められ、皮膚病変の性状によって予後が異なることが報告されている5)。 ATLLの皮膚病変は、斑型、局面型、多発丘疹型、結節腫瘤型、紅皮症型、紫斑型に分けることができ、それぞれの生存期間中央値(MST)は3.0~188.4ヵ月と異なる5)

ATLL病型別の予後

ATLLは4つの臨床病型に分類され、予後がそれぞれ異なる。2000年1月~2009年5月に新たに診断されたATLL患者1,594例を対象とした全国調査(ATL-Prognostic Index [ATL-PI]プロジェクト)では、急性型(895例)、リンパ腫型(355例)、慢性型(187例)、くすぶり型(157例)それぞれの生存期間中央値(MST)は8.3ヵ月、10.6ヵ月、31.5ヵ月、55.0ヵ月であった(図1A)。また、予後不良因子を有さない慢性型では未到達、予後不良因子を有する慢性型では27.0ヵ月であった(図1B)6)

図1 日本人ATLL患者(1,594例)における病型別生存曲線6)

1)

 医療情報科学研究所 編: 病気がみえる vol.5 血液 第3版, メディックメディア, p216-221, 2023

2)

がん情報サービス 成人T細胞白血病リンパ腫について(https://ganjoho.jp/public/cancer/ATL/index.html)(2025年5月時点)

3)

日本血液学会 編: 造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版) Web版, 金原出版, 2024

4)

石塚 賢治. 日本内科学会雑誌. 2017; 106: 1397-1403.

5)

Sawada Y, et al. Blood. 2011; 117: 3961-3967.

6)

Katsuya H, et al. Blood. 2015; 126: 2570-2577.v

2025年7月作成

承認番号:2003-JP-250003920

ATLLの診断

ATLL診断の流れ

ATLLを疑う臨床症状や検査所見が認められる場合には、抗体検査により抗HTLV-1抗体の有無を確認する。 ATLL患者では、flower cellと呼ばれる特徴的な核分葉や核の切れ込みを示す白血病細胞が末梢血中に出現することが多く、細胞・組織学的診断の大きな指標となる1)

抗HTLV-1抗体検査

ATLLの診断では、血清抗HTLV-1抗体が陽性であることを確認する。検査法としてはスクリーニング法(粒子凝集[PA]法、化学発光法)と確認法(ウエスタンブロット[WB]法)がある。 スクリーニング法では疑陽性がみられるため、陽性の場合には確認法で再検査することが望ましい。妊婦健診などでHTLV-1感染の有無を調べる際には、確認法での再検査が必須である2)

細胞・組織学的検査

ATLLでは、花弁状の核をもつ異常リンパ球(flower cell)や、核に切れ込みのある異常リンパ球が末梢血中に認められる1)。リンパ節病変では、中型の核や大型の核を中心に、多形性に富む不規則な核をもつ異型細胞がびまん性に増殖する1)。これらの腫瘍細胞が末梢性T細胞の表面形質を有することを確認する。ATLLの腫瘍細胞の表面では、CD3、CD4、CD25、CCR4、FOXP3の発現が認められる3)4)5)。腫瘍細胞において多数確認されるケモカイン受容体のうち、CCR4は90%以上で発現し、ATLL患者の予後不良因子である6)

HTLV-1遺伝子検査

ATLLの確定診断には、遺伝子検査による腫瘍細胞へのHTLV-1プロウイルスDNAのモノクローナルな組み込みを証明することが必要である。検査にはサザンブロット法を用いる(保険適用外)。 抗HTLV-1抗体陽性のT細胞リンパ腫患者の一部に、発がんにHTLV-1が関与していないATLL以外のPTCL患者が存在するため、鑑別が必要である。実際、抗HTLV-1抗体陽性のT細胞リンパ腫患者の約20%にHTLV-1プロウイルスDNAのモノクローナルな組み込みが認められなかったことが報告されている7)

ATLLの臨床病型分類

ATLLは臨床病態の特徴から、「くすぶり型」「慢性型」「リンパ腫型」「急性型」の4病型に分類される3)。2000年代に実施された調査では、患者割合はそれぞれ10%、12%、22%、56%であった8)。 急性型、リンパ腫型、予後不良因子を有する慢性型ATLLは急速な経過を辿ることが多く、アグレッシブATLLと呼ばれる。一方、くすぶり型および予後不良因子を有さない慢性型ATLLは比較的緩徐な経過を辿ることから、インドレントATLLと呼ばれる(それぞれの予後については「ATLLの病態と予後」を参照)。

 LDHが施設正常上限を超える、アルブミンが施設正常下限未満、BUNが施設正常上限を超える、のいずれか1つでも有する

  • くすぶり型:末梢血リンパ球数は4,000/μL未満で、異常細胞は5%以上。しばしば皮膚病変や肺病変を伴う。高カルシウム血症はない3)
  • 慢性型:末梢血リンパ球数は4,000/μL以上で、異常リンパ球が出現している。高カルシウム血症はない3)
  • リンパ腫型:末梢血に異常細胞はほとんどみられず、リンパ節腫脹をきたす。ときに高カルシウム血症を認める3)
  • 急性型:多くは白血化したタイプ。臨床症状は多彩で、リンパ節腫脹、皮疹、肝脾腫が多い。呼吸器症状、胸水、腹水、肝機能障害、下痢がみられ、日和見感染症の合併も多い。ときに高カルシウム血症を認める。血球減少はまれである3)

1)

Swerdlow SH, et al. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. Revised 4th edition. 2017; pp363-367.

2)

「本邦におけるHTLV-1感染及び関連疾患の実態調査と総合対策」研究班. HTLV-1キャリア指導の手引. 2011

3)

Shimoyama M, et al. Br J Haematol. 1991; 79: 428-437.

4)

Yoshie O, et al. Blood. 2002; 99: 1505-1511.

5)

Roncador G, et al. Leukemia. 2005; 19: 2247-2253.

6)

Ishida T, et al. Clin Cancer Res. 2003; 9: 3625-3634.

7)

Ohshima K, et al. Br J Haematol. 1998; 101: 703-711.

8)

Katsuya H, et al. Blood. 2015; 126: 2570-2577.

2025年7月作成

承認番号:2003-JP-250004101