薬物動態に及ぼす食事の影響を検討したクロスオーバー試験の結果、本剤の食事による影響は臨床上問題ではないと考えられました(引用1)。食前食後に関係なく、本剤を1日1回(慢性期CML)または2回(移行期、急性期CML、Ph+ALL)、決められた時間に服用するようにして下さい(引用1)。
<参考>
健康成人54例を対象に薬物動態に及ぼす食事の影響を検討した海外データでは、絶食時投与と比較して高脂肪食を摂取30分後に100mgを単回経口投与した時のAUCの平均値は、14%増加しました(引用1,2)。
<引用>
次の投与予定時に決められた投与量を服用して下さい。 その時、1度に2回分を服用しないで下さい。次回からも決められた時間に服用して下さい(引用1,2)
<引用>
本剤は、周りをフィルムコートでコーティングしており、添付文書でもかまずに服用するよう注意喚起をしておりますので、粉砕はお控えください。
また、安定性データ、有効性・安全性データがなく、承認された剤形での投与ではないことから、お勧めいたしません。
【添付文書 9. 適用上の注意】(引用1)
服用時:本剤は,かまずにそのまま服用するように注意すること
<引用>
PTPから出して、一包化した状態での安定性データを取っていないため、PTPシートのまま処方していただきますようお願いいたします。
<参考>
本剤はフィルムコート錠です。苛酷試験の結果、40℃/相対湿度75%で6ヵ月まで安定でした。また、25℃/相対湿度95%/24時間、40℃/相対湿度75%/6ヵ月の条件下で吸湿性を示さなかったことから、ダサチニブは吸湿性物質ではないと判断されました(引用1)。
<引用>
添付文書における禁忌、慎重投与に該当しません(引用1)。
ダサチニブとその代謝物の腎臓からの排泄はごくわずかです。ダサチニブ未変化体とその代謝物の腎クリアランスは4% 未満ですので、腎機能不全患者で全身クリアランスの低下は予想されません。臨床試験では、血清クレアチニ ン値が正常値上限の1.5倍を超えている患者は除外され、具体的に推奨される調整法はありません(引用2)。
<引用>
添付文書上、肝障害のある患者は、高い血中濃度が持続されるおそれがあるため慎重投与に該当します。投与に際しては、患者の状態を十分に観察し、リスクとベネフィットを十分に考慮し上で、医師の判断でお願いします(引用1)。
臨床試験では、GLT(GPT)又はAST(GOT)が正常値上限の2.5倍を超えている、又は総ビリルビンが正常値上限の2倍を超えている患者は除外されました(引用2)。
<参考>
◆肝機能障害患者における薬物動態
肝機能障害を有する被験者を対象とした海外臨床試験(CA180-051)にて、中等度肝機能障害患者(8例)、重度肝機能障害患者(5例)及び肝機能正常健康成人を対象に本薬を各々50、20 及び70mg を単回投与し、本薬のPK に及ぼす肝機能障害の影響を評価したところ、投与量70mg あたりに換算したCmax 及びAUC は、健康成人と比較して中等度肝機能障害者ではそれぞれ47%及び8%低下し、重度肝機能障害者ではそれぞれ43%及び28%低下しました。また、t1/2 は肝機能正常健康成人に比べて中等度及び重度肝機能障害者で延長しました。中等度及び重度の肝機能障害患者において本薬の曝露量に臨床上重要な変化はみられず、肝機能障害患者に申請用法・用量に従って投与可能であることが示唆されました(引用3)。
◆スプリセルの代謝・排泄経路
ダサチニブは主にCYP3A4により代謝され,活性代謝物は主にこのCYP3A4を介して生成されます。その他に,ダサチニブはフラビン含有モノオキシゲナーゼ酵素3(FMO-3)及びUDP-グルクロニルトランスフェラーゼ(UGT)により代謝されます。ヒト肝ミクロソームを用いた試験では,時間依存的(阻害薬が消失してもすぐに活性が回復しない)な弱い阻害作用を示しました(引用1)。
<引用>
本剤は、「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人」には禁忌となっておりますので投与をお控えください。外国において,妊娠中にダサチニブを服用した患者で,児の奇形及び胎児水腫等の胎児毒性が報告されています。また,動物実験において,ヒトでの臨床用量で得られる血漿中濃度以下で,ラットで胚致死作用及び胎児毒性,ウサギで胎児毒性が報告されています(引用1)。
<参考>
オーストラリア分類:D(引用2)
■胎児への影響(生殖発生毒性試験)
1)ラット及びウサギの胚・胎児発生に関する試験
本剤をラット及びウサギの器官形成期に投与すると、母動物に毒性を発現しない投与量で胎児異常を誘発したことから、本剤は両動物種における選択的な発生毒性物質と考えられました(引用2)
<引用>
授乳中の婦人には授乳を中止させてください。動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されています。本剤のヒト乳汁中への移行については不明です(引用1)。
<引用>
本剤はCYP3A4を阻害する薬剤と併用注意です。 本剤とケトコナゾールの併用により、ダサチニブのCmax及びAUCはそれぞれ4倍及び5倍増加しましたので、CYP3A4阻害作用のない又は代替薬の使用が推奨されます。CYP3A4阻害作用の強い薬剤との併用が避けられない場合は、有害事象の発現に十分注意して観察を行い、本剤を減量して投与することを考慮してください(引用1)。
<引用>
本剤はCYP3A4を誘導する薬剤と併用注意です。
本剤の血中濃度が低下する可能性があるため、CYP3A4誘導作用の強い薬剤との併用は推奨されません。誘導作用のない又は低い代替薬を考慮してください(引用1)。
<参考>
ダサチニブのPKに及ぼすリファンピシンの影響を検討する海外臨床試験(CA180-032)が行われました。ダサチニブ単独投与に比べて、リファンピシン併用投与時のCmax及びAUCはそれぞれ81%及び82%低下しました(引用1,2)。
<引用>
本剤は制酸剤と併用注意ですので、同時併用は避けてください。
制酸剤の投与が必要な場合には、本剤投与の少なくとも2時間前又は2時間後に投与してください(引用1)。
<相互作用の機序>
本薬の溶解度はpH の上昇により低下することが示されています(引用2)。
<参考>
■水酸化アルミニウム/水酸化マグネシウム含有製剤
本剤を単剤で投与する群、ファモチジンを併用する群、水酸化アルミニウム/水酸化マグネシウム含有製剤と併用する群の薬物動態を比較するクロスオーバー試験が行われました(CA180-020)。その結果、水酸化アルミニウム/水酸化マグネシウム制酸剤30 mL の投与2 時間後にダサチニブ50 mg を投与したとき、臨床上問題となるようなダサチニブのCmax及びAUCの変化は認められませんでした。水酸化アルミニウム/水酸化マグネシウム制酸剤との併用投与時では、ダサチニブのCmax 及びAUC(0-12h)はそれぞれ58%及び55%低下しました (引用1,3) 。
<引用>
ダサチニブはCYP3A4の基質となる薬剤と併用注意です。CYP3A4の基質となる薬剤の血中濃度が上昇する可能性があります。ダサチニブとシンバスタチンの併用により、シンバスタチンのCmax及びAUCはそれぞれ37%及び20%上昇しました。ダサチニブを治療係数が低いCYP3A4の基質となる薬剤と併用する場合には注意して下さい(引用1)。
<引用>
本剤はH2受容体拮抗剤と併用注意です。H2受容体拮抗剤又はプロトンポンプ阻害剤との併用は推奨されません。本剤投与中は、これらの薬剤に替えて制酸剤の投与を考慮してください(引用1)。
<相互作用の機序>
本薬の溶解度はpH の上昇により低下することが示されています(引用2)
<参考>
本剤を単剤で投与する群、ファモチジンを併用する群、水酸化アルミニウム/水酸化マグネシウム含有製剤と併用する群の薬物動態を比較するクロスオーバー試験が行われました(CA180-020)。その結果、水酸化アルミニウム/水酸化マグネシウム制酸剤30 mL の投与2 時間後にダサチニブ50 mg を投与したとき、Cmaxが26%増加しましたが、AUC(0-12h)に対する影響は認められませんでした。一方、水酸化アルミニウム/水酸化マグネシウム制酸剤との併用投与時では、ダサチニブのCmax 及びAUC(0-12h)はそれぞれ58%及び55%低下しました。ファモチジン40 mg の投与2 時間前にダサチニブ50 mg を投与したとき、ダサチニブの曝露量はダサチニブ単独投与時と類似していましたが、ファモチジン投与の10 時間後に投与したときのダサチニブのCmax 及びAUC(0-12h)はそれぞれ63%及び61%低下しました(引用3)。
<引用>
本剤はプロトンポンプ阻害剤と併用注意です。H2受容体拮抗剤又はプロトンポンプ阻害剤との併用は推奨されません。本剤投与中は、これらの薬剤に替えて制酸剤の投与を考慮してください(引用1)。
<相互作用の機序>
本薬の溶解度はpH の上昇により低下することが示されています(引用2)
<参考>
■オメプラゾール
ダサチニブのPKに及ぼすオメプラゾールの影響を検討する海外臨床試験(CA180-249)が行われました。ダサチニブ単独投与に比べて、オメプラゾール併用投与時のCmax及びAUCはそれぞれ42%及び43%低下しました(引用2)。
<引用>
本剤はQT間隔延長を起こす薬剤と併用注意です。ダサチニブ及びこれらの薬剤はいずれもQT間隔を延長させるおそれがあるため、併用により作用が増強する可能性があります(引用1)。
<引用>
海外の臨床試験において、1日280mgを1週間服用した過量投与例が報告されており、重度の骨髄抑制がみられました。過量投与が認められた場合には、患者さんの状態を十分観察し、必要な対症療法を実施すること(引用1)。
<引用>
体液貯留(胸水含む)は重大な副作用の一つであり、胸水(17.3%)、肺水腫(0.6%)、心嚢液貯留(3.0%)、腹水(0.3%)、全身性浮腫(3.5%*))等が報告されています(引用1)。
*海外臨床試験における副作用発現頻度
添付文書 重大な副作用には、以下のことが記載されています。
「呼吸困難、乾性咳嗽等の胸水を示唆する症状が認められた場合には胸部X線の検査を実施すること。重篤な胸水は、必要に応じて胸腔穿刺、酸素吸入を行うこと。本剤投与中は患者の状態を十分に観察し、体液貯留が認められた場合には、利尿剤又は短期間の副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な支持療法を行うこと。」(引用1)
<引用>
肺動脈性肺高血圧症は重大な副作用の一つですが、発現頻度は不明です。本剤を長期にわたり投与した際に発現した例も報告されています(引用1)。
添付文書 重大な副作用には以下のことが記載されています。
「観察を十分に行い、呼吸困難、胸痛等の症状があらわれた場合には投与を中止するとともに、他の病因(胸水、肺水腫等)との鑑別診断を実施した上で、適切な処置を行うこと。」(引用1)
<引用>
ダサチニブは特定の蛋白チロシンキナーゼのキナーゼドメインにあるATP結合部位においてATPと競合します。BCR-ABLのみならずSRCファミリーキナーゼ(SRC,LCK,YES,FYN),c-KIT,EPH(エフリン)A2受容体及びPDGF(血小板由来増殖因子)β受容体を阻害します(引用1)。
<詳細>
(1) ダサチニブは特定の蛋白チロシンキナーゼのキナーゼドメインにあるATP結合部位においてATPと競合します。BCR-ABLのみならずSRCファミリーキナーゼ(SRC, LCK, YES, FYN)、c-KIT、EPH(エフリン)A2受容体及びPDGF(血小板由来増殖因子)β受容体を阻害します(IC50=0.2~28 nM)。一方、他の関連性のない蛋白チロシンキナーゼ(FAK、IGF1受容体、インスリン受容体、HER1/HER2受容体、VEGF受容体-2、FGF受容体-1、MEK、MET、EMT/ZAP-70、SYK)及びセリン/スレオニンキナーゼ(P38、PKA、PKCキナーゼ、GSK-3、CaMKII等)に対しては阻害を示さず、SRCに対する阻害活性はこれらキナーゼの100~20,000倍高いことが示されています。
(2) 分子モデリングの結果、ダサチニブはABLキナーゼドメインのA-ループが閉鎖状態にある不活性型(閉鎖型)立体構造に結合すると考えられ、また、X線結晶構造解析により、A-ループが開放状態にある活性型(開放型)立体構造にも結合することが示されています。
<引用>